本日は、地裁判決ではなく、最高裁判決のご紹介です。
令和7年9月に下された最高裁判決です。
①事案の概要は、市の消防職員(小隊長等)が、採用間もない部下らに対し、ロープで宙づりにして懸垂を続けさせる、熱中症になるまで訓練を繰り返すなどの過酷な指導に加え、「殺すぞ」「死ね」等の暴言・人格否定や家族を侮辱する発言を、少なくとも10人の部下に十数年にわたり多数回行い、懲戒免職となりました。
原審は「重すぎる」として取消し等を認めた事案の最高裁の判断です。
②判断のポイント:
最高裁は、懲戒権者には処分選択の裁量があり、社会観念上著しく妥当を欠く場合に限り違法になると整理しました。
その上で、本件は指導の範囲を大きく逸脱し、反復・長期・多数被害という態様から非違は重大で、消防組織の秩序・規律と職員間の意思疎通を著しく害したとして、免職は裁量逸脱・濫用ではないとしました(原審は全体影響の評価が不十分としました)。
③実務上の留意点:
最高裁の判断から、ハラスメントは「個々の言動」だけでなく、反復性・期間・被害者数・立場・組織への影響を総合評価されることがいえます。過去の懲戒歴がないことや一定の反省だけでは、重大事案の免職が直ちに否定されないものです。また、復職への反対が多数に及ぶなど、職場の信頼回復可能性も評価要素となり得ます。組織においては、事実認定(聴取・記録)と判断過程の文書化、早期把握と是正、研修・相談窓口の実効性確保、訓練でも許容範囲の線引きを明確化しておくことが重要といえます。
組織におけるハラスメントの相談数は増えており、ハラスメントに関する研修依頼も増えています。ハラスメントが違法であることは誰しも知っていると答えますが、それが行動として防止できているかというと、決してそうではありません。
なぜ、ハラスメントはいけないのか、どうしたら、ハラスメントを防止できるのか、
ハラスメントが起きたときの企業の正しい対応手順は何か、きちんと準備して取り組んでいくことが求められています。
(田鍋/編集 中路)