契約書の役割と内容

契約書は必須でしょうか?」との相談を受けるケースが多くあります。メール、LINEでのやり取りは?注文書・請書では?スマホの録音・録画では?実際どうでしょうか。

契約書は必須なのか

法律上は、契約書等書面の作成が必須な取引もあれば、必須ではない取引もあります。例えば、・保証契約・一般定期借地権設定契約・定期建物賃貸借契約・事業用借地権設定契約・建設業法による取引などは契約書面が必須になります。

契約書が必須でない取引では、契約書がなくても取引は成立しますが、どのような契約条件を定めたのかがあいまい不明確となり、後日、問題が生じた際の処理方法等でトラブルになるリスクが高まります。せっかく開始した取引でトラブルになり、契約書がないことで、大切な権利利益が守られないとしたら、どうしますか?

業務の内容詳細をきちんと定めているか

コンサルティング契約・業務委託契約など締結される場合、留意される点があります。これらの契約は、売買契約とは異なり、一定期間、コンサルティング業務等を継続することが想定されると思います。

こうした契約では、具体的なコンサルティング業務の業務範囲、内容、業務の対応時間帯など詳細を定めておかないと、クライアントとの間で齟齬が生じるおそれがあります。例えば、営業促進・販売支援などのコンサルティングだとした場合、促進・支援の具体的な対応方法(いつ、どこまで、どの程度、やらなければならないのか?)を、決めておかないと、クライアントから、想定したよりも売り上げが上がらなかったなど反発を受けるおそれがあります。

ネットに掲載されている契約書を使用している事業者がアップデートをしていない事業者の方一度ご相談してみてください。

その契約書は大丈夫か

あなたの会社では、契約書の作成・確認・更新は、どのようにされていますか?

・インターネットから無料のダウンロードしたり、そこでつぎはぎをしている。
・以前使ったものを流用している。・相手から提示されたものをそのまま利用している。
・更新時も特に条項の見直しをしていない。
・専門部署がいないので、各部署がそれぞれ担当 しているため、形式がばらばらである。

多くの会社では、契約を獲得するために、マーケティング活動、販売活動、販促活動等に多額の時間と労力をかけますが、いざ、契約の段階になると、時間も労力も省いてしまう傾向があります。しかしながら、最終的にどのような取引条件で合意をしたかは提案段階などの話よりも「契約書」の内容が重要となります。提案段階で話をしていたのに、「契約書」にそれが盛り込まれないと十分な権利利益は確保されないというリスクがあります。よくあるのが、提案段階では、長期契約を前提に話をしているのに、契約書では、1年契約となっていたり、自由解約となっていたり、更新するかも自由になってしまっているというケースです。

せっかく獲得した取引をどのように確保し権利利益を守るのか、これからは、どれだけそこに意識をかけるのかが、企業の法務意識やコンプライアンスにも差が出ます。企業またそこで働く方の法務意識を上げる取り組みがまだ不十分でないとしたら、今こそ取り組むチャンスだと思います。

企業取引における責任制限条項の意義と必要性

契約書を取り交わす際に、責任制限条項を設ける場合があります。

企業取引における責任制限条項の定める意義は、万が一の事態が生じた際に企業が負うべき損害賠償の範囲を明確にし、過大な賠償負担から企業を守ることにあります。また、この条項により、予見可能なリスクを適切に管理し、企業間の信頼関係を構築することが可能となります。

責任制限条項を設ける際のポイントとしては、まず、制限の範囲が公正かつ合理的であることを確保することが重要です。具体的には、過失の程度や取引の性質を考慮し、損害賠償の上限の範囲を設定します。

また、法律によって責任制限が認められない場合(例えば、故意や重大な過失による損害)や規制法がある場合には、適用法を精査し、条項が法的に有効であることを確認することも不可欠です。

さらに、責任制限条項は明確かつ分かりやすい言葉で記述し、双方の合意のもとで契約に含める必要があります。これらのポイントを遵守していくことで、企業は、責任制限条項により企業取引におけるリスク管理を効果的に行うことが可能です。

特に新規ビジネスなどされるときには、契約書の作成にご注意いただければと思います。

(田鍋、編集 中路)

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