労務管理の重要性
皆さん、こんにちは。経営者がしっかり考えるべき労務管理についてお話しします。
労働関連法規と社会保険
労働者を採用するときには、経営者は、労働関連法規を遵守する必要がありますが、それを監督する国の機関が労働基準監督署となります。また、経営者は、労働者の社会保険も扱いますが、これについては年金事務所が監督します。年金事務所では、主に、年金の適用や加入といった調査関係、保険料の納付などの徴収関係、年金の受給関係などの調査監督を行います。
社会保険でよくある相談に、企業の社会保険加入漏れや社会保険料の支払漏れがあります。社会保険は要件を満たせば強制加入となります。加入をしなければならないのに、未加入状態が継続したり、社会保険料の未納が継続すると、ある日突然、年金事務所から調査のお知らせの連絡が来たりします。
あなたは、いきなり年金事務所や労働基準監督署から、連絡が来たらどう対応したらいいかわかりますか?経営者として、社会保険がわからないまま放置しておくことは労働者に対する安全配慮の観点からも問題となります。もし少しでも不安がある場合には、社会保険労務士からのアドバイスが有用です。
タイムカードと時間管理
労働者の労働時間について、経営者は、何時間勤務をしているか、把握することが求められます。労働時間の把握として、タイムカードを使用することが客観的に把握でき、かつ便利ですが、実際の労働時間であるのか、確認をすることが必要です。
例えば、始業時刻が9時からの場合に、タイムカードの時間帯が8時45分でチェックされていると、労働時間はどうなるでしょうか?会社としては、タイムカードに打刻された時刻は出社時刻であり、始業時刻ではないと考えがちですが、労働者からは、労働時間として時効にかからない範囲で、まとめて残業代を請求されるケースがあります。
労働時間で労使間の齟齬があると、大きなトラブルになってしまいますので、何時から何時までが労働時間であるのか、きちんと確認し、必要に応じて、労働者に伝えたり、規定などで明記することが必要となります。
名ばかりの労働契約になっていないか
契約書類を作成することは大切ですが、これが名ばかりなものや形式的なものであると、問題があります。
よくあるのが、労働分野ですが、名ばかりの管理職問題や名ばかりの期間雇用です。
肩書だけは管理職に充てるけれども、実質的な権限はない一労働者にすぎず、残業代の未払い問題が起こり得ます。
正社員ではなく、有期雇用の契約で更新するか条件があったとしても、実態では、更新面談がなかったり、形骸化したり、事実上更新が繰り返されていると、無期契約などのように扱われることがあります。
このように、当事者間で、どのような合意を定めたか書類を整えることは大切ですが、定めた内容の中身もきちんと履行されなければなりません。
あなたの会社などでは、書類の形式だけ整えてしまっている状態になっていませんか?問題が起きる前にきちんと確認されることをお勧めします。顧問パッケージサービスに相談し、備えていただければと思います。
ワークルールを学ぶ重要性
労働法は、他人を雇用し、働いてもらうときの経営者・労働者の働くことのルールを定めたものですが、きちんと学んでいますか?
「ワークルール」とも言いますが、最近は、経営者よりも労働者の方が、インターネットやユニオンなどを通じて知識を得ている一方、経営者の方は、あまり労働法を学べていないことが多いように思います。
「働き方改革」との言葉は聞かれていると思いますが、
- 採用のルール
- 勤務時のルール
- 福利厚生のルール
- 安全衛生のルール
- 給与・賞与のルール
- 懲罰のルール
- 解雇のルール
など労働法には様々な定めがありますが、法令改正もされている中、きちんと学べているでしょうか?
労働トラブルを予防し、生産性を高めるためには、経営者がきちんと「ワークルール」を継続的に学び続けることが必要だと思います。
「ワークルール」をきちんと学びたい経営者の方は、ぜひご連絡ください。一緒に学んでいきましょう。
管理監督者の要件
企業には、経営者と社員の間に、管理職という立場の方がいます。課長、部長、店長などの肩書を付されている方が多いと思います。
労働法規の観点では、「管理監督者」か否かで、残業時間、休日、休憩などの適用が変わりますので、その該当性は問題になります。
よくある勘違いは、上記肩書を付していれば、「管理監督者」であるとして、残業代など未払になってしまっているケースです。
労働法規が「管理監督者」の場合、労働時間などその適用を除外しているのは、それに見合う
- 職務
- 責任と権限
- 賃金の待遇
- 勤務態様
が整備されているからにほかなりません。
したがって、肩書などの名称ではなく、その実質から判断されるため、自社において、「管理監督者」と定めている場合には、上記①乃至④の観点から、経営者と一体的な立場にあるといえるかどうか検討が必要です。
未払い残業代に関する時効も延長されている以上、企業は今まで以上に労務管理を適切に行うことが求められます。
競業防止の定めは有効なものか
最近、競業避止義務を従業員と締結するケースがあります。ただ、内容をみると、有効性に問題が見受けられる場合があります。
会社が思うがままに一方的に過大な条項を定めると、公序良俗等に反し無効となる場合があります。
以下の点に留意をして、必要かつ相当な範囲で定まっているか、検討してみてください。
1.「会社の利益」はどうか?
競業避止義務を定める前提は、会社に守るべき利益があることが重要です。あなたの会社で守られるべき会社の利益とは、どのような利益になるでしょうか?
2.どうしてその社員なのか?
競業避止義務を課す従業員は、どのような立場にある従業員でしょうかまた、義務を課す必要性はどの程度あるでしょうか?
3.義務の範囲や程度はどうか?
競業避止義務の範囲や程度は、相当かつ妥当な範囲にされているでしょうか?地域無限定、期間長期間、義務が過大などになっていないでしょうか?
義務により守られるべき利益と課される従業員の不利益をきちんと考える必要があります。
4.代償措置はどうか?
競業避止義務を課されると、従業員は競業する活動ができなくなります。競業菱義務を課す代わりの代償措置は設定されているでしょうか?
競業避止義務を課す必要性があるときには、どのような内容にするか、後日となり無効と言われないよう、上記の点に留意をして、適正かつ相当な範囲にされるよう注意をしてください。
労働法違反とならないように
2022年、検察庁が、スナック菓子などを製造するメーカーに対し、違法な長時間労働をさせていたとして、労働基準法違反の罪で、法人・代表者を略式起訴したと報道がされました。
報道では、1ヶ月あたりの時間外労働が100時間超えや、複数月の平均で80時間超過があり、以前にも、長時間労働の指摘がされていたようです。
さて、時間外労働規制についてですが、働き方改革関連法の中で、長時間労働の抑制の改正がされています。
これにより時間外労働の上限は、原則月45時間・年360時間となっています。なお、臨時的な特別の事情がある場合など、例外が認められていますが、その場合でも、
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満
- 原則の月45時間を超えて労働させることができる回数は年6か月以内
となっています。
以上によれば、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満で、時間外労働と休日労働の合計は2~6月平均で1月当たり80時間以内とする必要があります。
なお、月80時間とは、1日当たり4時間程度の残業に相当します。
これを超えると刑事罰のおそれがありますので、事業者の皆様においては、長時間労働が見受けられるときには、速やかに是正されるよう対応を考えてみてください。
もし、対応の仕方が分からないときは、ご相談いただければと思います。
変形労働時間制
最近、変形労働時間制が違法と判断されたニュースや、変形労働時間制への導入に反対などのニュースがされていますが、変形労働時間制を聞いたことはあるでしょうか。
変形労働時間制とは、それぞれの事業所の繁忙期と閑散期などがある場合、その時期に合わせて労働時間を調整できるという制度です。
労働基準法では、労働時間は、原則、1週間40時間、1日8時間となります。この基準を超えると労働基準法違反になりうるところ、繁忙期などには、労働時間が1日8時間など超えてしまう場合があります。
こうしたとき、変形労働時間制を導入すれば、法定労働時間を月単位・年単位で調整可能となり、労働者も働きやすくなるという制度となります。
では、この制度について、なぜ違法と判断されたり、導入反対の意見が出るのかについて、別の機会でご案内をしたいと思います。皆さんの職場では、変形労働時間制は導入されているか、確認をしてみてください。
(田鍋/編集 中路)